企業においては部門を問わず、DXが求められています。当然、営業・マーケティング部門でもDXを推進しなければなりません。これらの部門では特に、デジタル化はある程度進んでいるがDXには至っていない、といった企業も少なくないようです。
ここでは、営業・マーケティング部門におけるDXとは何か、どのようなメリットがあるのか、何から手をつければよいのかなどを説明します。
営業・マーケティング部門におけるDXとは
一般的にDXとは、デジタル技術やデータの活用により製品やビジネスモデルに変革を起こし、新しい価値を創出して、企業の競争力を向上させることを指します。
営業・マーケティング部門におけるDXとは、デジタル技術を取り入れて顧客の購買行動を分析し、戦略を見直して、営業・マーケティング活動を最適化し続けることを指します。
担当社員側の視点ではなく顧客の視点に立ち、顧客にとっての価値を提供し続けることで、安定した利益確保を狙います。
DXについての詳細は、下記の記事をご参照ください。
「【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで」
顧客・ユーザー視点で戦略を練ることの重要性は、下記の記事も参考になります。
「DXにはUX向上が不可欠!その関係性や効果的な進め方を解説 」
「デザイン思考がDX推進に役立つ理由と推進の5ステップを紹介」
営業・マーケティング部門におけるDXとデジタル化の違い
部門を問わず、日本ではデジタル化は進んでいてもDXにまで至っていないケースが少なくありません。営業・マーケティング部門における、デジタル化とDXの違いを簡単に紹介します。
- デジタル化
デジタイゼーションとも呼ばれます。業務フローは大きく変えずに、例えば伝票処理など一部の業務にデジタル機器を導入するなど、部分的なデジタル化を行うことです。
デジタル化についての詳細は、次の記事をご参照ください。
「デジタイゼーションとは?デジタライゼーション・DXとの違いや具体例を解説」
- DX
部分的にデジタル技術を導入して終わりではなく、顧客の視点から購買行動やニーズ全体を見直して、必要なデジタル技術やデータを活用し、営業・マーケティング活動全体を変革することです。
なぜ営業・マーケティング部門にDXが必要なのか?
昨今ビジネス環境が変化し、従来の営業・マーケティング活動では成果につながらなくなっています。下記のような変化に対応するには、DXを推進して、営業・マーケティング活動を大胆にアップデートする必要があります。
- 顧客の購買行動が変化した
現在は、インターネットで顧客が自分で情報を収集し、取引を行うようになりました。メーカーや販売側の提供する情報よりも、インターネットでの口コミやレビューが重視されるようになり、これまでのやり方では、商品のアピールがしにくくなっています。
- 顧客の価値基準が変化した
モノ消費からコト消費へ変化していることが、さかんに指摘されています。これまでは、商品選定時に重視されるのは価格、質、機能などでした。最近はそれだけでなく、提供までのスピードや柔軟性、サービスや企業への信頼性、環境への配慮など、さまざまな要素が影響するようになっています。
- 対面でのやりとりに制約がある
新型コロナウイルスの影響により、顧客や取引先との対面でのやりとりが難しくなり、これまでと同じやり方では話が進まないケースが増えました。社会の意識が「ウィズコロナ」へと移行するに従い、徐々に対面でのやりとりの場も戻ってきましたが、感染状況によっては再び難しくなることも考えられます。また今後は、ほかの理由で対面形式に制約がかかる可能性も考えられます。
営業・マーケティング部門でDXを行うメリット
営業・マーケティング部門でDXを進めると、次のようなメリットを得られます。
- 業務のデジタル化による負荷軽減・効率化
システム導入による作業の自動化やデータ連携などにより、人間の手作業を減らすことができます。また、システム導入前の準備段階で業務フローを見直し、より効率的な業務フローに修正することも多いでしょう。
それらの相乗効果により、大幅な業務効率化の実現が可能です。
- プロセスの可視化と活動支援
営業支援システムを導入することで、顧客情報や案件情報を一元的に管理して可視化することが可能です。顧客の状況や商談の進捗状況がわかりやすくなり、潜在的なニーズや顧客の育成度合いも把握しやすくなります。
その結果、適切なタイミングで有効なアクションを起こすことが可能です。
- コスト削減
ITツール活用による業務効率化や、データ分析による営業・マーケティング活動の最適化などが可能です。
無駄がなくなり、大きなコスト削減につながります。
- リアルタイムの現状分析と意思決定のサポート
営業支援システムを導入すれば、商談の進捗状況、売上実数、売上予測などをリアルタイムで把握することが可能です。
そのデータをもとにスピーディーな意思決定を行う、データドリブン経営が可能になります。データドリブンについての詳細は、次の記事をご参照ください。
「データドリブンとは?活用するメリットや実行方法、事例などを紹介」
以上のように、営業・マーケティング部門のDXを推進することで、営業・マーケティング力を総合的に底上げし、それぞれの活動をアップデートすることができます。
営業・マーケティング部門のDXを実現するには
営業・マーケティング部門のDXは何から始めればよいのでしょうか。また、DX実現に向けたツールにはどのようなものがあるのでしょうか。順に見ていきましょう。
営業・マーケティング部門のDXは何から始めればよいか
営業・マーケティング部門のDX推進は、効果を実感しやすい次のような部分から着手するとよいでしょう。
- 顧客管理
顧客情報や案件の進捗状況、商品情報などをシステムで一元管理します。それによって顧客のニーズや段階を可視化し、顧客に最適化した営業活動を実現できます。
- リード(見込み客)の獲得
リードのニーズに合わせた段階的なアプローチによる顧客育成(ナーチャリング)は、リード獲得のための重要な工程です。各種ツールを駆使したデジタルマーケティングによって、リードを獲得します。オンラインで広告発信や商談の実施、メールマガジン発行などを行い、適切なタイミング・方法でアプローチをします。
マーケティング部門のDXについての詳細は、次の記事もご参照ください。
「マーケティングDXの効果や事例、成功した企業の特徴とは?」
営業・マーケティング部門のDXでよく使われるツール
営業・マーケティング部門におけるDX推進でよく使われるツールを紹介します。
- MA
リード獲得から育成の過程を効率良く行うマーケティングツールです。
- CRM
顧客管理システムと呼ばれ、顧客情報を一元的に管理するシステムです。
- SFA
営業支援システムと呼ばれ、営業に関する事務作業や書類作成を効率化し、商談の進捗状況を可視化するシステムです。顧客に合わせた営業方法をタイミング良く提案する機能もあります。
- オンライン会議システム
リモート営業や打ち合わせ、商品発表会、使い方の講習などさまざまな利用法があります。
- ナレッジ共有システム
顧客情報や案件情報だけでなく、営業担当者のノウハウを共有して社員のスキル強化に活用できます。
DXツールについては、次の記事をご参照ください。
「DXツールとは?意味や種類・導入によるビジネスの変化などを解説」
営業・マーケティング部門で成功するDX推進手順
営業・マーケティング部門で成功するDX推進の流れを紹介します。
営業・マーケティング部門におけるDX推進の最終的な目的は、営業・マーケティング活動の最適化により競争力を向上させることです。それにはまず、目的達成につながる具体的な目標を立て、それをひとつずつクリアしていくことになります。
ここでは一例として、今後の営業活動・マーケティング戦略などに活かすため、「これまで部署ごとに管理していた顧客管理の一元化」を目標とした進め方を紹介します。顧客管理の一元化とは、顧客ごとにデータを収集し、すべての顧客のデータを1つのデータベースで管理・可視化することです。また、顧客データの内容には、担当者・販売実績・商談状況、サポート内容などあらゆるものが含まれます。
では、一般的な進め方を見ていきましょう。
- 目標を明確にする
目標が異なれば適切な進め方も導入すべきツールも異なってきます。そのためまずは目標を明確にします。
この場合の目標は「顧客管理の一元化」です。
顧客管理を一元化することで、営業・マーケティング部門においては、効率的で成果につながりやすい営業活動やマーケティング戦略を、展開しやすくなります。また、販売部門やカスタマーサポートといった他部署においても業務効率化が見込めます。
明確にした目標は、それにより期待できる効果も合わせて全社員に共有することが重要です。社内の理解が得られ、進めやすくなります。
- プロジェクトチームを立ち上げる
顧客管理に関係する各部門、この場合は営業、マーケティングの他、例えば販売、広報、カスタマーサポートなどから担当者を集めて、プロジェクトチームを結成します。情報システム部門からも参加が必要でしょう。
プロジェクトチームは今回の目標を達成するために、現状を把握することから始めます。
既存の営業プロセスは効率的だったか、無駄はなかったか、あるいは、これまでのマーケティング戦略の在り方は現代の市場環境に合っているかなどを確認していきます。
問題があったなら、そこを「顧客管理の一元管理」によってどのように解決ができるか、解決するために必要なツールはどのようなものかなどを検討します。
- ツールを選ぶ
ここでの目標「顧客管理の一元化」を解決できるツールは、MA、CRM、SFAなど何種類もあります。同じ用途でもさまざまなツールが提供されています。
そこで、営業、マーケティング、カスタマーサポートなど現場の今の問題を解決できるもの、目標やニーズに合ったものなど、適切なツールを選択します。その中から、自社・部門に必要な機能が搭載された製品、現場の社員が使いやすい製品を選ぶことが大切です。また、他のツールとの連携を考えている場合は、その可不可の確認も必要でしょう。
プロジェクトチームはここで、ツールの運用管理についても検討しておかなければなりません。
- DX人材を育成・採用及び現場社員の教育
営業・マーケティング部門に限りませんが、DXを進めるためにはDX人材が欠かせません。DX人材を確保することでツールのメンテナンス、カスタマイズ、運用管理などを行い、ツールを活用しやすくなります。
DX人材を確保できていない場合は、外部からの採用も視野に入ってくるでしょう。しかしDX人材は、デジタル技術の知識だけでなく、自社のビジネスを理解している必要があります。できるだけ既存社員をリスキリングし、DX人材へと育成することが理想的です。
DXに必要な人材については、次の記事もご参照ください。
「DXを推進するために必要な人材と自社でDX人材を確保するためのポイント」
「DXを支える技術とは?技術を生かしてDXを推進するために必要な人材も紹介」
DX推進に必要なリスキリングについて詳しくは以下をご覧ください。
「リスキリングとは?DX推進のための人材確保に不可欠な戦略」
また、実際にツールを使うのは現場の社員です。使えない社員が多く、導入したものの十分に活用ができなければ意味がありません。導入時には、マニュアルを用意して終わりにはせず、セミナーを開催するなどして関係する現場社員が、全員操作できるようにしておきましょう。
営業・マーケティング部門でもDXの推進は必須
コロナ禍を機に、これまでのように「何度も顧客に会いにいく」という営業活動が通用しない場面が増えてきました。何度も足を運ぶという行為は有効な場合もありますが、逆効果である場合もあります。
営業・マーケティング部門では、他部門に比べて個人のセンスやノウハウなどに頼る傾向があり、やり方を担当者に一任するケースも多く見られます。しかし、市場の環境に大きな変化が見られるいま、それに迅速に的確に対応するには、デジタル技術やデータの活用が欠かせません。営業・マーケティング部門でも、DX推進は必須です。
デジタル技術やデータの活用により顧客視点の戦略を練って営業・マーケティング活動を展開し、安定的な成果につなげていきましょう。